初めて稼いだ500円
靴磨きを仕事にし始めた当初、私は500円で靴を磨いていた。
すぐに行動したがる私は、靴磨きをロクに学びもせずにすぐに仕事を始めたのだ。
500円という金額は、その時の自分に見合っていると思ってつけた金額。
私の初めてのお客様は、磨いた靴を渡すとその場で履いて見せ、とても喜んでくれて
ありがとう!と500円を手渡した。そして差し入れのジュースまでくれたのだ。
その時の情景を今でも思い出すことが出来る。
その場で対面で磨く余裕がまだなく、一度お預かりしてそのあと持っていって。
5月なのに暖かい日、ちょうど夕暮れの赤い日差しに包まれて
大成功だ!
溢れ出しそうな興奮を抑えながら私はいただいた500円とジュースを握りしめた。
自分の行ったことで喜んでもらえて、報酬がもらえた、この流れが手に取るように分かるのが靴磨きだった。
今まで警察官として働いてきて
自分が新米であったとしても働いた日数分のお給料がもらえていた。
警察官を辞めて、モデルや役者としての仕事をしてても、飲食のバイトをしてても、給料をもらってお金に困ることはそんなになかった。
でも、当たり前になりすぎて、こんな感情初めてだった。
自分がしたことで相手が喜んで、それで直接いただいた500円がこんなにも私に喜びを与えてくれること。
お給料でもらってた時は500円なんて一度の食事で普通に支払う金額。
でも、同じ500円と思えないほど私には大きかった。
もっともっと極めよう
そう思ったのもこの瞬間。
喜んでくれる人はまだまだたくさんいるはず!
そのためには腕を磨かなければいけない。
人気の革靴ってなんだろう?
ブランドはどのくらいあるんだろう?
革靴と合皮ってどう違うんだろう?
革はそもそもどうやって出来るんだろう?
知らないことだらけだ。
でも、何でだろう?
学校の勉強では全然いい成績も出せなかったし、勉強が好きじゃなかったのに、何でだろう?
自分から知りたいと思ったら、止まらない。
これが自分の天職だと直感がそう言ってる気がして。
だったら本当に極めようじゃないか、靴磨き!
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